ヨガは効果的なストレス・マネジメントの手段だと言われています.ストレス・マネジメントとは,ストレスによって起こる体や心の不快な反応を減少させ,ストレスによる症状を緩和することや,ストレスへの向き合い方を変えることで,ストレスにうまく対処する方法を身につけることを指します.
では,ヨガはどのようにストレスによる体や心の症状を改善するのでしょうか?
まず考えられるのは,ヨガの運動としての効果です.ヨガと同様に運動にもストレス軽減効果が知られていますが,ストレス軽減効果を発揮する運動にとって大切なことは,運動を行なっている最中に「心地いい」と感じることだと言われています.心地よさを感じながら行うヨガの体操は,効果的にストレスを軽減する運動となります.
またヨガの体操や呼吸法には,ストレスによる不調の原因となる自律神経の調節機能を改善し,ストレスホルモンを減少させる効果が確認されています.またストレスによる心の症状としては,不安の軽減や気分の改善といったヨガの効果が多数報告されています.こうした効果は,ゆっくりとした呼吸や穏やかな運動,呼吸や体など自分の内側に意識を向けるマインドフルネスによってもたらされるため,運動と同様に,心地よく集中して行えるヨガを行うことがストレス・マネジメントにつながります.
さらにヨーガの瞑想は,ストレスへの向き合い方を変え,ストレスにうまく対処するための気づきを与えてくれます.瞑想には多様な方法がありますが,ヨーガ療法で行うヴェーダ瞑想(知識の瞑想)は,自分の心のあり方を見つめ直すために行う瞑想です.ヴェーダ瞑想では,体操や呼吸法により体と心を整えた状態で,その人に合ったテーマについて考えることによって自分の心と向き合います(「あなたの日常生活の中にある幸せの種について考えてください」など).瞑想により自分自身の心と向き合い,心のあり方を見つめる作業を繰り返すことで自分を客観的に見つめ,こだわりや執着などの心のくせに気づくことで,ストレスとの向き合い方を変え,自分の行動を修正できるようになります.ヨーガ療法では,ストレスは決してなくならないけれど,ヨガの体操や呼吸法,瞑想法によって自分自身を変えることで,上手にストレスに対処できるよう自分の力で変化することができると考えています.
自分の心と体を大切にし,ストレスを成長の糧にするために,強いストレスを感じて「心と体をケアしたいな」と思った時には,心地よく感じられるヨガでストレス・マネジメントしてみていただければ,と思います.また自分の心を見つめ,物事との向き合い方を見直してみたいな,という時には瞑想法を試してみることが役に立つかもしれません.美味しいものを食べる,楽しい場所に行く,好きなことをするなどストレス・マネジメントの手段の一つとして,ヨガがみなさまの心と体の健康の役に立てばいいな,と思っています.
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